阿佐田哲也・色川武大の本を20代の頃舐めるように読んでいました。

いましろたかし(漫画家)

渡辺紘文君は太っているくせに実にたよりない男である。若いのに古い日本映画を耽溺し読むのは四十年前の小説ばかりだ。
それらに強く影響を受けて脚本を書くためセンスの古いこと言うまでもない。ひどい貧乏で挙動不審で冬でも汗をかいている。
簡単に女に惚れては百戦百敗、なのに自分が二枚目だと誤解しているようで、ここだけの話、どうやら頭もよくないらしい。
しかし─彼は粘り強い。行くと決めたらゲリラ豪雨だろうが爆弾が炸裂しようが、あの鈍重な笑みを浮かべて歩き続けるのである。
何年でも歩く。靴に穴が開けば裸足になり壁があればよじ登り、川に遮られてもざぶざぶ浸かって歩く。
今時珍しいこの妙な男が色川さんの大傑作に挑むという。彼のことだから無謀にも正面からひたすら押しまくるのだろう。
はたして何ミリ前進できるか、私は新宿に見物に行くつもりだ。

天願 大介(映画監督)

あさま山荘の映画でせっかくいい役をもらえていたのに、監督に反論して別役に降格させられたという俳優・松浦くん。
「美代子阿佐ヶ谷気分」の好演で別の監督に認められて、おいしい役をもらえそうだったのに、また飲み屋で監督をぶちギレさせて太宰治の映画に出られなくなったという、酒が一滴も飲めない松浦くん。
そんなならずものの彼が、ならずものの文学・色川武大「狂人日記」に挑戦するっていう。
松浦くんて清廉に生きてるよな。僕は、君を信用する。

向井 康介(脚本家)

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